会長拝命にあたってご挨拶




山田 雅彦 (北海道大学)




 第45期の会長を拝命しました,北海道大学 山田雅彦です.学会の非常に重要な時期に,かかる大任を仰せつかり大変困惑しておりますが,1年間微力を尽くさせて頂きたく存じます.どうぞ宜しくお願い申し上げます.
 これまで,森川前会長が担当された将来構想検討WGにおいて,学会の法人化の必要性,メリットとデメリット,法人化した場合の学会運営の形態や財政の問題など,あらゆる事柄を検討して参りました.その経緯と取りまとめについては,昨年度の総会にて堀部明彦前会長からご説明や報告がなされました.法人化検討を推進するという方針を総会でご承認頂いた現在,これまでの検討結果を集約して,進む方向を決めて行く時期にあると考えております.
 しかし,総会の出席者は現会員の半数に満たないのが現状ですので,会員の皆様には状況をご理解頂けていない方が少なからずおられることと思います.法人化はこれまでの熱物性学会の運営形式に少なからぬ変更を来すことになります.40数年前に研究会として発足し,その後,時代の変化に即して学会の運営形態を少しずつ変化させながらも,その設立時の理念を保持しつつ運営の工夫がなされて来ました.今後は,社会の変化に対して学会が存続できるような,規模は小さくとも柔軟で強靱な学会体制にして行く必要があります.この趣旨が理解されないままでは,法人化に際して学会を退会される方がおられることも懸念されます.
 法人移行のための学会解散については,会則には総会員数の3/4以上の賛成が必要とありますが,出来れば全会員が賛同の上で新法人に移籍して頂けるよう,趣旨をご説明するとともに,法人化をスムースに行うための,様々な運営方法の変更,予算措置の準備・検討を行い,次世代の方々に先送りの課題を極力残さないよう慎重に進めて行きたいと思います.
 御異論はあることと思いますが,熱物性研究は,地道な熱工学研究の中でもさらに派手ではないながら,一方,工学の様々な分野における研究や技術革新において重要な基礎情報を与えるものであり,これまでもこれからもその重要性は変わりません.
 一方で,研究や開発の途上で熱物性の情報が不十分であるという場面が今後益々増えると予想されます.熱物性学会の存在価値と意義は,そのような物性データのニーズに対応出来るデータの蓄積・公開と,熱物性研究を行う会員を多く擁することと思います.本学会では,様々な熱物性データを提供し,ニーズに応えるために,ハンドブックの出版やデータベースの運用がなされておりますが,欲しいデータが見つけられないという状況は今後さらに増えると予想されます.本学会が,企業や他分野の研究者と,熱物性研究者とを結ぶ機会を提供する分野横断的,そしてハブ的な学会になるよう,そのプレゼンスをより一層強化する必要があります.
 積極的な情報交換の場として,熱物性シンポジウムや,各研究分科会,セミナーなどが積極的に運用されていますが,今後はより多くの他分野の研究者や企業の方々がシンポジウムやセミナーに参加されるよう,たとえば,シンポジウム開催期間中に積極的な情報交換の場を提供する工夫,シンポにおけるセッションの様子の一部を動画配信するなど,シンポジウムの開催方法や宣伝・周知方法の検討を含め,参加者の増強のための工夫を提案してゆきたいと思います.
 40年以上にわたり,諸先輩が築き上げてこられた熱物性学会の理念を忘れることなく,重要な転回点において適切な方向へ舵を切ることができるよう微力を尽くしたく存じます.会員諸氏におかれましては忌憚の無い御意見やご教示をどうぞ宜しくお願い申し上げます.
 

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