第34期会長就任にあたって




長坂 雄次 (慶應義塾大学)




1. はじめに
 3年間の事務局担当副会長,横浜でのシンポジウム開催の後1年間お休みを頂きましたが,第34期会長を仰せつかりました.上利泰幸副会長,山田純事務局担当副会長,20名の北海道から九州までの8地区代表の評議員,2名の監事,そして各種担当理事の皆様と共に1年間,どうぞ宜しくお願い致します.
 ついこの間,学会創立30周年の様々な記念事業が行われたと思っているうちに,すでに3年が経過してしまいました.次の40周年,50周年もあっという間に迫ってくるのでしょう.

2. この学会の取るべき戦略
 熱物性学会はこれまで,様々な分野の諸先輩方の熱き思いと並外れた努力によって,30 年を超えてなお高いアクティビティーを維持していると思います.今年の富山で34回を数える熱物性シンポジウム,熱物性ハンドブック,その中で産まれた様々な分野の人々の繋がり,そして新しい研究分野の立ち上げ等,学会員とその周囲に浸み込んだ有形無形の恩恵が,本学会によってもたらされたことは間違いないでしょう.『もし熱物性学会がなかったら』と考えてみると,私たち会員の身の回りのいろいろなことが,世の中に存在していなかったことに気づきます.
 「熱物性学会にしかない」魅力を将来にわたり高めて,さらに外に発信できるアクティビティーを維持するにはどうしたら良いでしょうか?私なりに考え,また多くの会員の皆様とも共有できると思われる鍵は,次の3つだと思います.(1) 分野横断性: 多分野を縦糸とし,熱物性という横糸で織った布が私の学会イメージです.(2) 適正規模: 全会員数500人程度で大きくない学会で良い,というか会員の新陳代謝を常に促進して,この程度の数に頑張って維持することが肝要と思います.(3) 新たな分野の取り込み: 学会のアクティビティーを牽引する新しい縦糸である新分野(新会員)を常に取り込む意識と努力を途絶えさせないことは必須と思います.
 上記3つの鍵は当然独立ではありません.幅広い分野でさらに新たな分野を常に取り込んで,しかも学会としてのアクティビティーを高く維持していくには,高い機動性のある適正な学会規模が必要です.本学会も以前は,より大きい規模を目指していた時期もあったように思います.多くの会員の皆様は,より大きい規模の「メイン学会」に入会しており,本学会とは違ったベクトルでの役割を果たしているかと思います.学会としての戦略を誤らなければ,大きな学会との棲み分けを維持しながら,本学会にしかできない独自の発信が可能だと考えます.このような学会活動の形は,私の知る限り欧米にも,韓国や中国にも陽には存在していないのではないでしょうか.私としては,老舗優良ベンチャー企業(他に真似できない製品を創る老舗で,常に革新的で,しかし規模の拡大を必ずしも目的にしない)のような学会を目指せればと思っています.

3. 身の回りの新たな会員
 新たな分野の取り込みの一つの仕組みとして,「研究分科会」が現在機能しています.その規定が本号に掲載されていますが,非会員でも加入できることになっています.これは創設時からの「本学会の心の広さ」のあらわれであり,また同時に新分野・新会員を取り込むメカニズムでもあります.会員皆様の身の回りに潜在的会員候補は必ずいます.学会存続維持のためというより,『ここにこそあなたの活躍の場所がありますよ』と身近な1人2人にでも分科会やシンポジウム参加を勧めて頂ければ,それが大きな学会活動の一部になるのです.
 会員の皆様のご支援,ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます.

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