第35期会長就任にあたって
吉田 篤正 (大阪府立大学)
第35期(2014年)会長を務めさせていただくことになりました吉田篤正(大阪府立大学)です.一昨年に開催いたしました大阪での熱物性シンポジウムでは皆様にお世話になりました.しばらく前になりますが,熱物性誌の編集委員長を務めさせていただき,多くの方々に記事の執筆,論文関係でご迷惑をおかけしました.個人的には,私の学生時代からお世話になり,慣れ親しんだ学会になります.不慣れではございますが,よろしくお願いいたします.
会則の設置目的の条文に,「本会は,広く熱物性値の測定・評価・普及などに携わる研究者と,研究成果の利用者との交流を通じて,熱物性研究の進展とその成果の社会への還元に寄与することを目的とする.」と書かれています.また,宮野秋彦先生が熱物性誌の発刊の辞の中で,「熱物性シンポジウムの発表分野が工学,理学,農学,医学,生活科学などの広範な学問分野に及び,今や本会がさまざまな専門領域を「熱物性」という横糸で結ぶ極めてユニークな学際的学術団体として育ちつつある.」と述べられています.
諸先輩方のご努力により,種々の物質の熱の性質に纏わる研究内容を広くカバーして,多くの専門分野の方々が集まる,「学際的」,「分野横断的」,「異分野融合」の言葉を冠することができる学術団体として成長してきたと考えています.来る者は拒まずの精神で,アットホーム的な雰囲気の中で,真摯な議論を行えるという方針は堅持したいと思います.学会規模としては,大き過ぎず,小さ過ぎず,適正な規模であり多くの分野の会員がおられることもあり,迅速に柔軟な対応が可能であると思います.
本学会の一大イベントである熱物性シンポジウムおよび研究分科会はその中で大事な役割を果たしています.熱物性シンポジウムは,本年度も11月に東京工業大学で開催予定です.分野横断的なオーガナイズセッションも企画予定であり,多くの会員の論文投稿とご参加をお待ちしております.分野を超えての活発な議論を期待しています.講演論文集に関しても,そのあり方について議論を深めていきたいと考えています.また,研究分野の開拓,研究内容の深化に向けてテーマを絞った研究分科会の活発な活動を望みます.これまでも多くの成果を上げており,いくつかの研究分科会では出版物を作成して情報発信に努めています.他学会に比べるとお安い年会費で,異分野間で有意義な情報交換ができる場の提供に繋がればと思います.熱物性シンポジウムでのオーガナイズセッションの設定や研究分科会の設置などにより当学会への会員獲得に繋がるように努力したいと思います.
研究成果の情報発信に関しては,論文投稿,データベースの構築・活用などを挙げることができます.熱物性シンポジウムで質の高い数多くの発表がありますので,投稿論文数をもう少し増やせないかと考えております.学会の評価,社会への還元の観点からも重要であると思います.また,熱物性のデータは知的財産としての価値は高く,それらを学会として取り纏めたデータベースの構築は重要な活動です.既に一部は公表されていますが,更なる充実を図っていくと共に,活用しやすいデータベースの構築を目指せればと思います.新しいデータの追加についても検討を始めたいと考えています.
将来を見据えた研究の方向性を打ち出すことは,当学会としても積極的に取り組むのは当然のことと思います.逆に,泥臭く現場対応を求められる事案にも答えることも本学会の使命と考えています.実験ではノウハウを必要されることも多いと思いますが,そういった技術の伝承も課題の一つと考えています.
学会員の構成メンバーの中に,法人会員,企業所属の個人会員の方々もおられます.大学関係者とは異なる観点から学会に参加されていると思います.いろいな立場の方々からご要望もお聞きしながら,本学会に参加されている会員の皆様にとってお役に立てるよう努力させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします.