リテラシー




佐藤 真奈美 (大阪工業大学)




 第36期(2015年)会長を務めさせていただくことになりました佐藤真奈美(大阪工業大学)でございます.大阪での熱物性シンポジウムから熱物性学会の活動にほとんど参加できない状況で丸一年以上,会員各位におかれましてはご無沙汰の上,会長の挨拶でお目にかかる事,大きな驚きをお感じと推察いたします.お受けしてしまった会長職の重圧にどこまで耐えられるか,会員各位のお支え頼みでおります.どうぞよろしくお願い申し上げます.加えて,昨年5月には職場のメール環境がクラウド対応となり,情報センターからの要請である新アドレスへの移行に速やかに応えたまでは良い線を行っていると思ったものでした.ところが旧アドレスへ送信されたメールの閲覧を出来ない状況にしてしまったため,情報網から孤立して半年を過ごしました.これはまさに情報を収集する能力(コンピュータリテラシー?)の不足を実感した私的事件でした.私的事件の「とばっちり」で多方面にご迷惑をおかけしてしまいましたこと,この場をお借りしてお詫び申し上げます.
 さて,情報リテラシーなど,〇〇リテラシーという能力を表していると思われる言葉が氾濫しています.このような文章を書くこととなり,はやり言葉の〇〇リテラシーとはどのような能力を指すものなのか,改めて考える必要を感じました.この"〇〇リテラシー"について徒然なるままに,書き進めたいと思います.
 リテラシーとは以下のような意味を指す言葉です。
【1】識字能力,読み書きの能力【2】教養がある[教育を受けている]こと,教養【3】(特定の分野·問題に関する) 知識,能力1)
 識字率と同意味を指すこともあるようです.人は何世紀にもわたり認識できた事柄を残し,知識を形成してきました.情報の欠落が少ない伝達方法として「文字」は文明(技術や,実用に重点がある物質的文化2))を築き上げることに大きな役割を果たしたと考えられます.その意味でリテラシーとは文明を伝える重要な能力であると言えます.
 さて,現代のリテラシーはと,投稿形式の情報を探ってみました.「語頭文字」にはメディア,コンピュータ,情報,視覚,ヘルス,精神,金融,科学,統計,人種,文化,環境…と,リテラシーは日々増殖しているようです.内容は領域・分野ごとの知識活用能力と,活用規範を示しているものが多いようです.〇〇リテラシーを共有するということは〇〇分野の知識の定義と活用規範を一致させることと理解できます.だとすると,領域・分野で細分化して定義される〇〇リテラシーはその領域・分野の隠語の存在を容認するもののような気がしてなりません.文明の継承と発展にとって,〇〇リテラシーはどんな役割を果たすものなのでしょう.リテラシーは領域・分野を縦横断して存在するものであると浅知恵ながら思い至っております.
 熱物性学会は人の生体から生活者に密接に関係する衣・食・住、生活の場である地球の将来を考えるエネルギー,新素材の開発,更には宇宙への生活領域を広げる分野と多岐にわたる研究者・技術者の集まる組織です.このような集団の中で分野ごとの隠語を使った情報交換はあり得ません.異分野との知識共有のためにも,literacyは本学会会員の重要な力と言えます.本学会の魅力はリテラシーの豊かな会員相互の交流に集約されると思います。
 本年度は仙台でシンポジウム開催です.研究会活動はじめ広い研究分野の様々な研鑽の成果を携え,「熱物性」というテーマのもとで大いに交流できる年にしたいと思っております.会員各位におかれましてはこれまでにも増して,ご協力を賜りますようお願いして,挨拶に替えさせて頂きます.

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