第38期会長就任にあたって




山田 純 (芝浦工業大学)




 第38期(2017)の会長を拝命しました芝浦工業大学の山田純です.大学院の学生のころからお世話になっている学会に,何か恩返ししたいと思い, この機会に,学会の役割について考えてみました.
 本会会則第2条(目的)には,「本会は,広く熱物性値の測定·評価·普及などに携わる研究者と,研究成果の利用者との交流を通じて,熱物性研究の進展とその成果の社会への還元に寄与することを目的とする」とあります.他学会の会則,定款を見ても,前段部分はもちろん学会が扱う分野に応じて変わりますが,後はほぼ同じです.大まかに,当該分野の研究者間の交流を通じた知識,情報の交換,それを通じて当該分野を発展させるとともに,それをもって社会に貢献する, とまとめることができます.では,どの学会もなすべき事は同じか,というとそうではないと思います.
 学会には,会員数が数万にもおよぶ大規模なものもあれば,本学会のように500人に満たないものもあります.規模の違う学会では,会則,あるいは,定款にある目的達成のために,注力する点が異なるのではないでしょうか.大きな学会では,多数の講演会や国際会議を開催し,Impact Factorの高いJournalを発行するなどして,社会的な地位を高め,その上でできる社会貢献をしています.「政策提言」を学会事業に明記している学会もあります.もちろん小さな学会でも,同様な活動をしていくことは大切です.本会も,昨年,慶應義塾大学の長坂雄次実行委員長のもと, 400名を超える参加者を集めたATPC2016を主催しています.非常に誇らしく思います. しかし,人員(会員数)や予算規模からみて,大きな規模の学会と同等の活動を続けるのは難しいのも事実です.そもそも多くの会員の皆さまは,大規模な学会にも所属しそこでも活動しています.本会に参加いただくメリットが,何かないといけないと思います.
 私自身のことを振り返ると、入会したての頃は,シンポジウムで研究発表させていただくぐらいでした.知り合いも少なく,懇親会に参加しても,居心地が良くなかったことを覚えています.ただ,熱物性学会が他と違ったのは,知り合いの先生を通じて,著名な先生とお話しする機会が得られたことです.大きな学会の懇親会では,そのような先生は皆忙しく,先生同士で難しい(政治の?)お話しをされており,若い人が入り込む余地はありません.本会の懇親会は,規模が小さいこともあって,先生方も少しリラックスされているのか,若い私なんか(当時です)とも時間をかけてお話いただいたのを覚えています,大変嬉しく思いました.その後も懇意にしていただき,評議員に推薦いただくことにもなりました.
 熱物性学会を通じて,多くの先生方と知り合えたことは私にとって大きな財産となっています.先生方から,研究そのものについてはもちろん,研究に向き合う姿勢,研究費,教育,大学のあり方など, さまざまなことを教えていただきました.大学人として何とか食べていけるのも,本会のおかげと思っています.以上の経験から,私としては,会員相互の距離を縮めること,そして,もういい歳(?)なので,若い人たちに,そのような機会,あるいは,環境を提供することに注力したいと考えています.何か良い仕掛けができるといいのですが.
 第28期会長の牧野俊郎先生は,評議員に参加いただく役員会後に,必ず懇親会を開催することを決められました.本会の評議員は現在20名で,役員会の定数は33名です. この数字は,個人会員数の一割近くに達します.年に数回の懇親会は会員相互の距離を近づけるのに良い機会となっています. もし,評議員,その他理事の依頼がありましたら,是非,お引き受けいただき,学会運営にご協力下さい.決して損はないと思います.宜しくお願いいたします.

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