2025年 第46期会長挨拶




会長 桃木 悟(長崎大学)









第46期の会長を拝命いたしました長崎大学・桃木悟です.熱物性学会の法人化へ向けた活動を本格的に開始する段階大事な年に,このような大役を担当する事となり,少なからず戸惑いもありますが,精一杯務めさせていただきますので,どうそ宜しくお願い申し上げます.

ご存知のように,本学会の安定した運用の継続や活性化を目的として,将来構想検討WGを中心に,学会法人化の可否の検討を進めてきました.昨年長岡で開催された総会にて報告されたように,法人化の様々なメリーットやデメリットに関するこれまでの検討結果を受けて,今年は,法人化された場合のシミュレーションを開始します.その結果を踏まえて10月に佐賀で開催される総会にて方針を決定し,法人化を進める場合には,会員の皆様よりその了承を頂く予定です.ご協力をお願いします.

個人的な感覚ではありますが,昨今,任意団体の活動において,特に金銭の取り扱いに関する制約が増え,活性化を目指す行動に伴うコストが次第に大きくなっているように感じます.ただ,それでも私は楽観的な見方をしていて,熱物性に関連した研究や業務に関連されている皆様が集ってできたこの学会は,この課題を上手く乗り越えていけると信じております.

昨年の総会や懇親会における挨拶でも述べましたが,私の最初の研究は「ヘリウムのプール沸騰熱伝達に関する研究」と題したベークライトの熱伝導率(熱拡散率)の測定でした.当時は,熱物性とは何なのか理解していないだけでなく,そもそも熱物性といった語句を意識すらしていなくて, 題目に騙された感など全くなく,只々,充実していた事を今でも覚えています.そもそも物性値の概念を理解していなくて,本質的な意味や重要性を考えたり理解した気になったのは,上の課程へ進み経験を積み上げてからでした.最初に,学会の九州地区の幹事に任命された時,熱物性に直接関連した研究していたわけではありませんでしたが,既に熱工学に係っていましたので,躊躇せず引き受けて,本格的に皆様の仲間にしていただいたと思っています.その後,2011年から10年ほど学会の企画担当として学生の表彰を,2017年には長崎でのシンポジウムの開催の担当をさせて頂きました.もちろん,これらの活動も私にとって充実した経験となりました.

この充実感について改めて考えてみると,熱物性学会の活動を通じて知り合い,そして一緒に活動したりした人たちの存在が大きいと感じます.そのような人たちの力があって,例えば,2004年にあった学会事務センターの破綻によって生じた大きな危機も,故藤井丕夫前会長を始めとして多くの方々の活躍がって何とか乗りきる事ができました.また,その後も多くの,特に,事務局を担当された歴代の副会長の方々のご尽力によって,熱物性学会は今日まで順調に継続しているものと思っています.一般的には,このような属人的な運営スタイルは駄目というのがセオリーなのかもしれません.しかしながら,̏熱物性̋には,このような人を引き付ける力があって,これからもあり続けるはずです.

現在は何かと面倒な時代なのかもしれません.そうであっても,熱物性学会運営の鍵は,広い意味で「熱物性」に関する研究や活動が魅力的であり続けることです.そして,それを支える環境を整えることが何よりも重要だと考えています.そうあって欲しいと願っています。一年間,皆様の協力を仰ぐ事が多くなると思いますが,何卒,よろしくお願い申し上げます.
 

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